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Michel Grannec

1964

HISTORY

01

初代TGV Sud-Estの歴史

豪華国際列車から、高速列車の時代へ

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華の「TEE」時代

1957年(昭和32年)、戦後急速に発達した航空機や自動車に対抗するため、西ヨーロッパでは主要都市を結ぶ国際特急「TEE(Trans Europ Express/ヨーロッパ横断特急)」の運行が始まります。
ドイツの「ラインゴルド」、パリーアムステルダム間の「エトワール・デュ・ノール」など、誰もが「一度は乗ってみたい」と憧れられる各国の最優等にふさわしい豪華な列車が次々と登場、欧州各地を駆け巡りました。

1961年、スイス国鉄のTEE車両「RAeⅡゴッタルド」が初の電車方式のTEEとして登場。KATOでは同車を1989年(平成元年)に模型化しました。

フランスの大動脈

「TEE」が繋ぐ街々の中心ともいえる都市、それが花の都パリでした。なかでも、フランスの首都パリと第二の都市リヨンの間は欧州有数の主要幹線といえる区間です。その需要は昼夜問わずあり、昼間はフランス国鉄(SNCF)の看板特急「TEE ル・ミストラル」が、夜はブルートレインの元祖である「ル・トラン・ブルー」が両都市を結んでいました。狙い通り鉄道需要が増加する一方、同区間の過密ダイヤと速達化は限界を迎えようとしていました。


そんな中、遥か遠くの国から驚きのニュースが届きます。

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「夢の超特急」

0系新幹線登場 

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1964年(昭和39)年10月1日―
日本の東京~新大阪間を結ぶ東海道新幹線が開業。世界初となる最高速度210km/hの「夢の超特急」の営業運転が始まりました。航空機のような流線型のスタイル、アイボリーホワイトとブルーの初代新幹線車両0系は世界に大きな衝撃を与えました。

英国の鉄道博物館に保存されている0系新幹線

こうした日本での高速列車の成功を受け、世界でも列車の高速化に向けた動きが本格的に活発化しました。
特にフランス国鉄(SNCF)は新幹線を徹底的に研究し、それを超える世界一の高速列車の開発、そして高速新線の建設に着手します。

 

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1957

高速列車の時代へ

TGVとLGV

高速新線は「LGV(Ligne a Grande Vitesse)」、そこを走行する高速鉄道車両は「TGV(Train a Grande Vitesse)」と名付けられました。東海道新幹線と、新幹線用車両と同じ関係です。

高速新線(LGV)の最初の建設ルートに選ばれたのは、もちろん主要幹線であるパリ~リヨン間。この区間は「LGV南東線」すなわちSud(仏語:南)Est(仏語:東)と名付けられました。
 

「パリ―リヨン間」

誕生

1972

“翼のない飛行機” TGV誕生

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​試験車両 TGV001

1972年(昭和47年)、TGVの原型となる試験車両「TGV001」が誕生しました。動力にはガスタービンエンジン方式を採用、年12月8日には当時の世界記録となる318km/hを樹立しました。

人々がこれまで見たことない高速度での運転と、丸みを帯びたデザインに鮮やかなオレンジのボディは人々に「未来の列車」を感じさせました。

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1978

Michel Grannec

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Michel Grannec

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TGV ”Sud-Est” 落成

1978年(昭和53年)、1970年代のオイルショックなどの影響を受け、ガスタービン方式は断念せざるを得なくなり、電気機関車方式が新たに採用されることになりました。そうして登場したのがTGV Sud-Estです。先行試作車の第001編成と第002編成には“パトリック”と“ソフィー”という愛称が与えられました。

両端の電気機関車2両(M1/M2)と、8両の中間客車(R1~R8)で構成された特徴的な編成で、新幹線とは異なる動力集中方式となりました。また、先頭車には連結器が装備されており、編成同士の併結による20両編成の運行を可能としています。

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LGV南東線開業

1981年(昭和56年)9月27日、LGV南東線開業とともに、TGV Sud-Estは高速列車として本格的なデビューを果たしました。営業最高速は260km/h。

 

需要の高いパリ∼リヨン間は重連での運転がなされ、圧巻の20両の長大編成で、高速化と輸送力の確保に大きな成果を上げました。

1981

Michel Grannec

Tips!

380km/hの衝撃

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Michel Grannec

営業運転開始に先立つ1981年2月26日、世界最速を目指した高速走行試験が行われました。記録は380km/hに到達、脅威のスピードに世界中が沸き立ちました。


TGV Sud-Est 第016編成は、客車を5両に短縮、ギア比や架線電圧などを高速試験用にするなどの改造は施されたものの、運転台の速度計には280km/hまでしか目盛りがなく、いかにこの挑戦が前人未到の試みであったかを物語っています。

“列車がまるで舞い上がり、大西洋や地中海の上空を飛んでいるような心地だった”

“景色を見ようとする間もなく、散り乱れた風景が次々と車窓の後ろへと消えていく”

“蒸気機関車へのノスタルジアと、驚きの声を上げる暇も与えず足り去るこの翼のない飛行機への讃嘆の思いとに引き裂かれて、涙にくれていた”(元国鉄老職員の記録)

試験に立ち会った人々は、高速で駆け抜けるオレンジ色の高速列車の姿を見て、新たな高速列車時代の訪れを感じたのでした。

​2011

1996

時を越える活躍

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国際列車デビュー

TGV Sud-Estはデビューからわずか6年間で111編成もの数が製造されました。中には、国内線用の2電源対応車(22000形)に加え、3電源対応車(33000形)も登場。これは異なる電源方式を持つスイスへの直通を担う国際列車として運用されました。

国際列車仕様の33000形の中に一際異色の存在を放っていたのが第112編成です。第112編成はスイス国鉄に長期リースされていたため、前面のフランス国鉄を示す「SNCF」のロゴがオレンジ色に塗りつぶされ、側面にはスイス国鉄を示す「SBB」のロゴが配されました。フランスを代表するオレンジ色のTGVに赤いアクセントの効いたスイス国鉄のロゴが添えられた姿は、TGVが国境を越え、国際列車として活躍し始めたことを誇らしげに物語っています。

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世界最速の郵便列車、

黄色いTGV ”La Poste”

1984年(昭和59年)10月、フランス国鉄(SNCF)はフランス郵便(La Poste)と契約し、TGVを郵便専用の列車に改装。世界最速・世界初の高速郵便列車「TGV “La Poste”」が誕生しました。第38編成を改造したこの車両は、フランスのポストと同じ黄色一色に塗装され、約30年に渡って「走るポスト」として活躍しました。

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TGVブランドの刷新。

オレンジからシルバーへ

1996年(平成8年)には新たにLGV大西洋線が開業し、TGV Sud-Estの後継車両TGV Atlantiqueが登場しました。

これを機に、TGVのブランドイメージの刷新が図られ、ロゴの変更や従来のオレンジからスタイリッシュなシルバー・ブルーへの塗装変更がなされました。後輩のAtlantiqueに合わせてSud-Estもこのシルバー・ブルーの塗装へと塗り替えられました。

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運行開始から30年。

「カーミヨン」塗装の登場

更に時はながれ、TGV営業運行開始から30年が経過した2011年(平成23年)。TGVの路線網はさらに拡大され、新型TGVも数多く登場していました。

SNCFではTGVのみならずSNCF全体のブランドイメージも再度刷新。カーマインレッドとバーミリオンを混ぜた「Carmillon(カーミヨン」)と呼ばれるモダンさとエレガントを備えた現代的な都市デザインへと移り変わります。

TGV Sud-Est編成もこのカラーリングに変更されましたが、30年もの活躍による老朽化にともない、2012年からは徐々に置換が開始されました。

高速鉄道のパイオニア TGV Sud-Estの勇退

時代の流れとともに、活躍の場や塗装を変えながらも40年近くの年月を活躍し続けたSud-Estにも、遂に引退の時が訪れます。しかし、高速鉄道時代を築きあげたレジェンドの存在は人々にとってかけがえのないものでした。

​2020

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最晩年の2020年(令和2年)には、 前年に引退した第001編成の“パトリック”が、彼が駆け抜けた40年の歴史を象徴する歴代の3塗装を纏った姿でリヨン駅に復活し、世界中の愛好家たちを熱狂させました。

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世界中から愛されつづける “初代TGV”

時を越える活躍

1984

Photo Peter Huerzeler Collection

欧州の高速鉄道網のパイオニアとなった初代TGV。

フランス最大の鉄道博物館「シテ・デュ・トラン」では、かつて多くの人が魅了された登場当時のオレンジ色の姿に復元され、今なおお鉄道史に残るその功績を現代に伝えています。

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