kato-Special Features


Pioneer Zephyr
Courtesy of Griffin Museum of Science and Industry, Chicago
1934年、大恐慌で沈んだアメリカに颯爽と現れた、未来の列車。
“Zephyr”の開発は、鉄道の再生を賭けた挑戦でもありました。
シカゴ・バーリントン&クインシー鉄道(CB&Q)の「バーリントン・ゼファー(Burlington Zephyr)」は、米国バッド(Budd)社によって製造された、世界初のオールステンレス製鉄道車両として知られるディーゼルカーで、1960年までの約26年間にわたって活躍しました。
その後登場する数々のアメリカの高速列車「Zephyr」シリーズの先駆けであるとともに、ステンレス車体の時代を切り開いたことからのちに「パイオニア・ゼファー(Pioneer=開拓者)」と呼ばれるようになった同車は、現在もシカゴ科学産業博物館に静態保存され、アメリカ国内外に影響を与えたその歴史を今に伝えています。
KATOでは2026年夏、この革新的な流線形ディーゼルカー「パイオニア・ゼファー」を、これまで培ってきた連接台車構造やステンレス表現のノウハウ・技術を駆使し、1/160のNゲージ鉄道模型として製品化いたします。
2026年10月発売予定
CB&Q Pioneer Zephyr
シカゴ・バーリントン&クインシー鉄道
パイオニア・ゼファー
106-101
¥34,100
Zephyrの歴史
世界恐慌からの鉄道復興
1929年に発生した世界恐慌は、アメリカの鉄道にも大きな影響を与えました。当時主流であった蒸気機関車は、車輛そのものや運行を担う機関士達だけでなく、給炭・給水の設備やそれらに関わる様々な人員が必要となり、コストが高い輸送手段でした。不況により旅客数は激減、さらに自動車や航空機の普及によって、鉄道は急速にその地位を失いつつありました。こうした状況の中で、各鉄道会社には旅客輸送を立て直すための抜本的な改革が求められていました。
“バーリントン・ゼファー”の登場
Courtesy of Griffin Museum of Science and Industry, Chicago
この課題に応える形で登場したのが、シカゴ・バーリントン&クインシー鉄道(CB&Q)の「バーリントン・ゼファー(Burlington Zephyr)」です。ステンレス製の軽量車体とディーゼル機関を組み合わせたこの新型車両は、従来の鉄道が抱えていた「高い運行コスト」「古いイメージ」といった問題を一気に解決する存在でした。編成は連接台車によって一体化され、高速かつ安定した走行を実現。さらに、流線形の外観はそれまでの鉄道のイメージを一新し、“未来の列車”を強く印象づけ人々を驚かせました。

▲シカゴ万国博覧会での展示の様子
1934年には「ドーン・トゥ・ダスク・ラン」(=夜明けから夕暮れまで)という記録走行イベントが実施されました。デンバーからシカゴまで約1,633km(※)にも及ぶ区間を、太陽が出ている間、13時間5分で走破。当時としては驚異的な、平均速度約124km/h、最高速度は181km/hを記録しています。沿線に詰めかけた多くの人々を魅了する一大イベントとなり、新技術のアピールとしても大成功を収めました。バーリントン・ゼファーはこの成功によって一躍注目を集め、鉄道の新時代の到来を印象づけました。
※日本で例えると、新幹線で札幌~東京~大阪~姫路間の営業キロに相当

TIPS!
列車名「Zephyr」に込められた意味
「Zephyr(ゼファー)」とは、ギリシャ神話に登場する西風の神に由来する言葉で、「やさしく吹く風」「軽やかな風」といった意味を持ちます。その響きは、軽量で高速に走る新しい列車のイメージにふさわしいものでした。
この名称には、もうひとつの意図も込められています。CB&Qの社⾧ラルフ・バッドは、あえてアルファベットの最後である「Z」から始まる名前にこだわりました。それは、「鉄道の時代は終わりに近い」とも言われた時代に、新たな始まりをもたらす列車であるという強い意志の表れでもありました。
数ある候補の中から選ばれた「Zephyr」という名は、こうして誕生しました。

Courtesy of Griffin Museum of Science and Industry, Chicago
ブロード・ストリート駅での命名式の様子
大成功とその後
登場以降、バーリントン・ゼファーは各地での試験運用や宣伝走行に用いられ、大きな話題を呼びました。その先進的な性能とデザインは人々の注目を集め、鉄道への関心を再び高めることに成功します。同年11月からは、リンカーン~オマハ~カンザスシティ間の定期列車としての運行が開始されました。実際の乗客数も増加し、その効果は営業面でも明確に現れました。
この成功を受けて、同社では後続となる「Zephyr」シリーズが次々と登場します。複数のゼファーが運行されるようになると、最初に登場したこの編成は、後に「パイオニア・ゼファー(Pioneer Zephyr)」と呼ばれるようになりました。さらに他の鉄道会社も同様の流線形ディーゼル列車を投入し、アメリカではいわゆるストリームライナー時代が到来します。パイオニア・ゼファーは、その先駆けとして、鉄道の新たな時代を切り開いた存在となりました。

Courtesy of Griffin Museum of Science and Industry, Chicago
数あるゼファーシリーズの中には、KATO(KATO USA)からすでに製品化されたものたちもあります。
Silver Streak Zephyr
(シルバー・ストリーク・ゼファー)

「シルバー・ストリーク・ゼファー」は、リンカーン~オマハ~カンザスシティ間を運行する列車として1940年に登場しました。
同区間では、それまでパイオニア・ゼファーが1両増結された4両編成で活躍していましたが、人気の高まりにより輸送力が不足しつつあったため、より大容量の列車として導入されました。新たに投入されたシルバー・ストリーク・ゼファーは、従来の連接構造に代わってボギー台車を採用。固定編成による軽量・高速性を重視した初期のゼファーから、増結や編成変更が容易な、より実用的な列車への発展を示すものでした。
多くの「ゼファー」が地名を冠する名称を持つ中、「Silver Streak」は「銀色の流線」を意味する言葉です。
この名称は、ドーン・トゥ・ダスク・ランを題材とし、パイオニア・ゼファーが主演を務めた映画『The SilverStreak』に由来しています。
California Zephyr
(カリフォルニア・ゼファー)
1949年に登場した「カリフォルニア・ゼファー」は、シカゴとサンフランシスコ(オークランド)を結ぶ長距離列車として運行されました。CB&Qだけでなく、D&RGW(デンバー・アンド・リオグランデ・ウェスタン鉄道)、WP(ウェスタン・パシフィック鉄道)の3社による共同運行で、ロッキー山脈やシエラネバダ山脈を越える絶景ルートを走ることから、“アメリカで最も美しい列車”の一つとしても知られています。
約4,000kmにおよぶ長大な区間をおよそ2日間で結び、寝台車や展望ドーム付客車を連結した編成は、快適な長距離鉄道旅行の象徴ともなりました。

また、カリフォルニア・ゼファーは現在も名称が受け継がれている「ゼファー」のひとつです。現代ではAmtrak(アムトラック:全米鉄道旅客公社)によって、2階建てのステンレス製客車「スーパーライナー」を使用して当時とほぼ同様のルート(シカゴ~サンフランシスコ(エメリービル)間)で運行されており、その伝統は現在まで続いています。

そして今回、これらの原点ともいえる「パイオニア・ゼファー」が満を持して登場します。

オールステンレス車両という変革
バッド社の技術
米国のバッド(Budd)社は、自動車用鋼製ボディの製造で培った技術をもとに、鉄道車両の分野へ進出したメーカーです。特にステンレス鋼を用いた車体構造の実用化において大きな役割を果たしました。同社が開発した「ショット溶接(Shotweld)」は、ステンレス鋼を効率よく接合する革新的な技術であり、軽量かつ高強度な車体の製造を可能にしました。この技術により、外板だけでなく車両構体(主構造)までステンレス鋼で構成された“オールステンレス製鉄道車両”が実現します。従来の鋼製車両に比べて軽量で耐腐食性に優れ、メンテナンス性にも優れた画期的なものでした。こうして誕生したのが、1934年に登場した「バーリントン・ゼファー(後のパイオニア・ゼファー)」です。バッド社の技術は、この列車を皮切りに世界各国へと広がり、鉄道車両の製造技術に大きな影響を与えました。
Courtesy of Griffin Museum of Science and Industry, Chicago

▲10人の男性と少年によって引かれる、軽量なオールステンレス車両
パイオニアⅢ・パイオニアⅢ台車
バッド社はその後も軽量ステンレス車両の開発を進め、1950年代には「Pioneer III(パイオニアⅢ)」と呼ばれる新しい軽量客車・電車のコンセプトを発表します。
1956年に試作車が完成し、1958年にはペンシルバニア鉄道(PRR)において電車として実用化されました。
特徴のひとつである「パイオニアⅢ台車」は、小径車輪を採用した軽量構造と優れた乗り心地を両立した台車で、後の鉄道車両設計にも大きな影響を与えました。
※「パイオニア」は、バッド社における革新的な開発に対して用いられた名称です。ステンレス製飛行艇がPioneer Iに、また「パイオニア・ゼファー」に搭載されたディーゼル機関がPioneer IIにあたるとされ、Pioneer IIIはその流れの中で登場した新しい軽量客車・電車に与えられた名称です。
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レール工房ひげしん 銭谷政彦
▲パイオニアⅢ台車(東京急行電鉄7000系のもの)

レール工房ひげしん 銭谷政彦
▲外側に露出したディスクブレーキが目立つ(南海電鉄6000系)
日本への展開と発展
バッド社のステンレス車体技術は、やがて日本にも導入されました。
東急車輛製造は昭和34年(1959)にバッド社との技術提携契約を締結し、その技術をもとに国産のステンレス車両を開発しました。昭和37年(1962)には、初の国産オールステンレス車両として東京急行電鉄7000系が登場します。
関西初のオールステンレス車両である南海電鉄6000系も同年に登場しました。

▲東京急行電鉄7000系

▲南海電鉄6000系

レール工房ひげしん 銭谷政彦
▲車内や台車に掲出された、バッド社との技術提携契約を示すプレート
これらの車両には、軽量化と乗り心地の向上を実現するパイオニアⅢ台車の思想が取り入れられ、日本の通勤電車の発展に大きく寄与しました。
バッド社の鉄道車両製造部門は後に売却されましたが、日本では同社からもたらされた技術を礎として、「軽量ステンレス工法」へと独自の発展を遂げました。やがてその技術はさらに改良と発展が重ねられ、今日では多様な工法へと展開しながら、多くの鉄道車両がオールステンレス製で製造・運行されています。
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▲国鉄205系(軽量ステンレス工法)

▲JR東日本E235系(sustina)
製品情報・試作品
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106-101
CB&Q Pioneer Zephyr
シカゴ・バーリントン&クインシー鉄道
パイオニア・ゼファー
¥34,100

製品は、登場時のオリジナル3両編成をモデル化いたします。「ドーン・トゥ・ダスク・ラン」を行った仕様であり、現在シカゴ科学産業博物館に保存されている形態とも同等の仕様となっています。
車両ごとに異なる車体長・台車間距離が独特です。

1号車 #9900
ディーゼルエンジンを備えた動力車です。機関車ではないため、車内には郵便・荷物輸送に供されるスペースを備えています。バッド社独自のショット溶接により、点状の接合跡が並ぶ外観や、曲線で構成された独特な前面形状を的確に再現しています。製品では前進時にヘッドライトが点灯します。
また、DCCサウンドスピーカーの取付が可能な構造を採用しています。
2号車
郵便・荷物スペースのほか、ビュッフェと座席客室を備えた中間車です。比較的短い車体ながら多くの機能を持ち、日本の形式でいえば「キサハシユニ」に相当するユニークな構成の車両です。

3号車
座席客室と展望室を備えた後尾車です。
各車とも、特徴的なコルゲートの車体やステンレス車特有の質感を的確に再現しています。
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本線走行では1号車が先頭となる、進行方向の決まった編成です。しかし、車庫内での後進時などには前方を照らす「バックアップライト」を備えています。製品では、3号車において通常運行時のテールライトに加え、バックアップライトの点灯も再現しています。
「ヤコブス台車」を採用した連接構造も、パイオニア・ゼフ ァーの大きな特徴です。台車側面にカバーを取り付けることで、編成全体の一体感を強調しています。
実車では増解結が困難な連接構造ですが、模型では車両ケースからの出し入れが容易な構造を採用し、軽い力で連結・解放が可能です。
台車側面のカバーはもちろん、連結時に車体間に見える幌部分まで、実感的な形状で再現しています。
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2026年10月発売予定
ご期待ください
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