kato-Special Features
Big Boy
世界最大の蒸気機関車への挑戦
P : EIKI SEKINE
世界最大の蒸気機関車 "Big Boy"
P : EIKI SEKINE
ユニオン・パシフィック鉄道4000形蒸気機関車「ビッグボーイ(Big Boy)」は、世界唯一となる2DD2(4-8-8-4)の軸配置、総重量507t、炭水車を含む総全長40mにも及ぶ世界最大・世界最強の蒸気機関車です(※)。1941~1944年にかけて、ユニオン・パシフィックから受注を受けたアメリカン・ロコモティブ・カンパニー(ALCO社)によって25両が製造され、1959年まで活躍しました。2019年、アメリカ初の大陸横断鉄道開通150周年という記念すべき年には、約60年の時を経て4014号機が動態保存機としての復活運転を果たしています。
KATOでは2023年春、世界一有名なこの蒸気機関車を、これまで培ってきた蒸気機関車模型のノウハウ・技術を駆使し1/160のNゲージ鉄道模型として製品化いたします。
※最大・最強の定義によって諸説あります。
2023年5月発売予定
ユニオン・パシフィック鉄道
ビッグボーイ #4014
126-4014
¥49,500
BigBoyの歴史
Big Boy誕生の背景―ロッキー山脈の難所「ワサッチ峠」
1869年にアメリカ初の大陸横断鉄道建設の担い手として発足したユニオン・パシフィック鉄道は、アメリカ中西部のネブラスカ州オマハを起点に、ユタ州ソルトレイクシティを経て二手に分かれ、西海岸のオレゴン州ポートランド、カリフォルニア州ロサンゼルスに至る大陸横断ルートを中心とした路線網を有しています。アメリカの大陸横断ルートの中でも最も歴史が古く、西海岸の主要各都市に連絡する幹線鉄道として、輸送量も当時最大を誇っていました。
この路線最大の難所となるのが、ワイオミング州グリーン・リバーとユタ州オグデンの境に位置するロッキー山脈の「ワサッチ峠」です。この峠越えの区間は、11.4‰(パーミル)にも及ぶ勾配区間が100km以上も続きます。それほど急勾配ではないとは言え、100kmを越える長い上り勾配を1マイル(約1.6km)以上に及ぶ長大貨物列車を牽引するというのは、機関車にとって脅威的なものでした。
ユニオン・パシフィック鉄道は、この区間に早くから超大形の機関車の導入を行っていました。1936年にはBig Boyの兄弟とも称される、単式間接形機関車 3900級「チャレンジャー」が登場しました。チャレンジャーはパワフルで高速性能を有していましたが、それでもなおワサッチ峠を越えるすべての列車を単機で牽引するには至らず、多くの列車は重連運転を余儀なくされました。
P : EIKI SEKINE
世界最大の蒸気機関車、誕生
1940年、欧州ではすでに第二次世界大戦の火蓋が切られていました。軍事輸送需要など更なる輸送力の強化の必要性を感じたユニオン・パシフィック鉄道の会長ウィリアム・ジェファーズは、副会長兼研究開発部長のオットー・ヤーベルマンに、「ワサッチ峠の難所を3300トン級の貨物列車を単機で牽引できる性能を持つ蒸気機関車」の開発を命じます。これを達成するため、巨大なボイラーと火室を備え、先台車と従台車の間に走り装置2組を組み込んだ「2DD2(4-8-8-4)」という巨大な機関車が設計されました。
1940年11月にはアメリカン・ロコモティブ・カンパニー(ALCO社)に15両を発注。翌年1月に追加の5両が発注され、1941年8~10月に1次車20両が落成しました。この20両には4000から4019の番号が附番されました。発注額は1両約26.5万ドルで、現在の約420万ドル(=約5.8億)に相当します。
1944年には輸送力が急増し、更に5両(No.4020~4029)が増備されました。2次車にあたるこのグループはデッキ手スリ部分の冷却用の配管が無く、機械的な冷却方式を採用、使用金属の違いによる重量差などの相違点があります。
1946年には一番の難所区間へのディーゼル機関車の導入が始まり、1948年以降はオグデン~グリーン・リバー間を運行することは少なくなり、徐々に活躍の場を東に移していきました。第二次世界大戦後は石炭の値段と人件費が上昇したため、蒸気機関からディーゼルの時代へと移っていきましたが、ビッグボーイは最後まで走り続けた蒸気機関車のひとつになりました。
1959年7月21日、4015号機が担当したララミー~シャイアン間の貨物列車牽引を最後に、ビッグボーイは18年間に渡る活躍の幕を降ろしました。大部分のビッグボーイは1961年までは走行可能な状態で保管されていましたが、現在は全25両のうち8両が現存しています。
豆知識💡 なぜ“Big Boy”?
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4000形蒸気機関車は、製造当初は列車の走行ルートにちなんだ「ワサッチ」という名称がつけられると噂されていました。しかし、ある日ALCO社のスケネクタディ工場で落成した最初の4000号機に何者かがチョークで「Big Boy(大きな少年)」の名前を落書きしました。巨大な(Big)蒸気機関車にミスマッチなBoyというネーミングセンスが受け、次第にBig Boyの名で定着したと言われています。
※2019年の復活記念には、このエピソードを模した手書きのBIG BOYの落書きが施されていました。
復活へ
P : EIKI SEKINE
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2012年12月、ユニオン・パシフィック社はこの世界最大の蒸気機関車ビッグボーイの動態復元への関心を表明、2013年にはカリフォルニア州のレール・ジャイアンツ鉄道博物館に保存されている4014号機の譲渡の合意がなされました。
2019年、アメリカ初の大陸横断鉄道開通(1869年)から150周年という記念すべき年に、約60年の時を経て4014号機の動態復元が実現しました。現在ではエクスカージョントレインなどの客車を牽引する記念運行などで、その勇ましく動く姿を見ることが出来ます。
写真は試作品です。
模型化への挑戦
鉄道模型専業メーカーであり、日本・アメリカ・ヨーロッパなど世界各国の蒸気機関車の製品化を手掛けてきたKATOにとって、Big BoyのNゲージモデルの製品化は大きな夢でした。日本で一般的なD形の機関車を2両あわせたような巨大なこの機関車を、従来の品質・走行と遜色のない品質で仕上げるために、様々な新たな挑戦がなされました。このビックプロジェクトに対し、営業部から開発部門・設計部門・生産部門へインタビューを行いました。
開発編ーメカニズムー
Q.動力機構の開発で、最も難しかったポイントは?
A.最も難しかったのは、R282通過の実現です。Big Boyは車体が大柄で動輪数も多いため、曲線通過の面では特に不利な車両です。実車は前ユニットのみ旋回するような構造を持っていますが、模型では前後ユニットをともに電車の台車のように回転させる構造としてこの2点をクリアしました。
ここで重要なのが前後の回転軸の位置で、通過時の車体姿勢や内部構造との相関、牽引時の外圧作用、実車との相違感の解消等、様々な条件を加味して設定しています。結果的に米国の他社製品とも回転軸位置が異なったものとなり、設計思想の違いを興味深く感じます。
Q.特徴的な機構や構造は?
A.動力ユニットです。前後ユニットをそれぞれ独立した動力とし、コアレスモータを使用した動力メカを新規開発しました。ユニット内部は日本形蒸機製品で培った構造を踏襲し、これまで通りの上質な走行性能を目指しています。この独立したユニットは前=先導、後=牽引の役割をそれぞれ担っており、ちょうど重連運転のような状態を構造的につくりだしています。実質二台分の動力が一台に集約されていることとなり、牽引力の増大や走行時の車体姿勢/挙動の安定化といった効果も大いに期待できます。またこの構造は実車と同様の出力形態であり、お客様に喜んで頂けるポイントにもなろうかと思います。
Q. KATO製品初の要素は?
前後ユニット間の通電構造と、シリンダのウエイトです。
上述の回転軸部品に通電機能を持たせた構造を新たに開発しました。接点同士の擦れ合いを最小限におさえることで、通電性と耐久性を両立させています。
シリンダウエイトは、車体重量バランスの最適化のため、各シリンダ内に収まるウエイトを新規製作しました。
設計編ー巨大な蒸気機関車を部品に分け、再構築するー
Q. 設計で苦労したところは?
A. 1両の車両ですが、部品数は400個を超えました。D51で約200部品ですので、その倍に相当します。このような細かい部品は、設計そのものはもちろんですが、管理面でもとても神経を要します。どの部品が何なのか、どんな素材で、どのように組付けるのかなど、マスターとなるデータを何度も目を皿にして確認を行いました。
部品名から形状のイメージが難しい、というのもあります。例えば配管類の部品でも可動パイプ、ブラストパイプ、ターミナルパイプ、ブラストパイプ、ジョイントパイプなど…パイプと名の付く部品がこれだけありました。
生産治具の打ち合わせでは、経験の無い構造でしたので、製品設計、生産技術、組立で知恵を方向性を決めて行いました。治具の都合で部品形状の変更も行っています。
P : EIKI SEKINE
Q. 金型づくりでのこだわりは?
A.構造が今までにない複雑なものなので部品点数もとても多かったのは大変でした。使用する工具を選定するため部品同士の関係性を把握し、設計された形状一つ一つの目的を確認していきました。また、複雑なパーティングライン合わせが多く、高度な精度管理を求められます。関水金属の金型の実力、腕の見せ所だと思い、メンバー一丸となって協力して取り組んでいます。
米国蒸機を楽しむ
2023年8月発売予定
UP FEF-3蒸気機関車
#844(黒)
12605-2
¥33,000
アメリカの巨大鉄道会社ユニオン・パシフィック鉄道の、旅客用大形蒸気機関車のFEF-3。
旅客牽引用として使用され活躍していましたが、昭和25年(1950)頃からディーゼル機関車の台頭により、貨物牽引を中心とした運用で最後の活躍を続けました。その動態保存機#844号機は、現在はワイオミング州シャイアン機関区を拠点に、イベント列車を牽引して活躍しています。
BigBoyを走らせる
BigBoyをはじめとする米国形にお勧めの雄大な複線プランです。曲線部にわたるヤード部分など、エクスカージョントレインやダブルスタック貨車など、さまざまな車両の走行をお楽しみください。
レイアウトプランの詳細はこちらから
製品情報・試作品写真
ユニオン・パシフィック鉄道 ビッグボーイ #4014
126-4014
¥45,000
・60年の時を経て復活したユニオン・パシフィック鉄道の「ビッグボーイ(Big Boy)」4014号機を製品化
・復活蒸機ならではの美しい外観を光沢仕上げで再現
・特徴的な4-8-8-4の軸配置(アーティキュレーテッド)と重厚な足まわりを再現
・コアレスモーターを2基搭載。スムースかつパワフルな走りを実現
・最小通過曲線半径R282mmでの走行を実現(※複線区間やヤードでの走行の際は、対向する車両が接触しないようにご注意ください。)
・実車同様にFEF-3との重連編成を再現可能(FEF-3・GS-3用重連用カプラー付属)
・ヘッドライト点灯
・ナックルカプラー標準装備。カプラートリップピン、FEF-3・GS-4用重連用カプラー付属